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第2話 顕現〜崩壊の旋律〜

 春華にしてみれば、やや鬱陶しい話だった。
わざわざ「パラッパー」こと秋山のエンジェルになるなんて(笑)。
その日、2人は吉牛(きちぎゅう(笑))に行き、秋山の恋愛話について
延々と聞かされていたのであった。
秋山が好きな相手は、篠原綾。春華の高校の、2年生である。
篠原という名前をどこかで聞いたなと思いながら、春華は続きを促していた。

秋山:「お前、同い年とは思えないぐらい、ほんと頼りになるからなあ」
と言われると、ついつい春華は「仲間だろ」と(心の中で)言ってしまうのだった。
春華:「マジなんてだっせーよ、秋山ァ・・・」と、口には上らせながら。

 帰りながらも、春華は秋山のことを考えていた。
人間とは、なんとはかない生き物なのだろう。
そのくせ、秋山のような「虫けら」な男でも、燃える命はなんと美しいのだろう。<「竜」のおごり
かつて春華が竜そのものだったときの記憶を思い出していた。
あのとき・・・死にゆく、燃え尽きていった「虫けら」を見たことがあったのは、いつだったか・・・。

(ここからは、春華の行動で、多少変わるかもしれません。)
 砂漠にあった、自分の住処のそばで、戦で死にゆく男を多数見た。
肌は裂け、どす黒い血がおびただしく流れ、目は曇り、既に焦点を合わせることができないでいる男ども。
肌は黄ばみ、立ち上がるどころか体を動かすこともできない。
たいていの男どもはすぐに息絶えてしまうのだが、その中に、長く苦しんでいるものがいた。
唇はひび割れて血が流れた後があるのに、今もまだ「苦しい、早く、楽にしてくれ」とつぶやいている・・・。
枯れた涙を流し、死を請うている。安息を欲している。

 それを見つけたブラック・ウィドウは、父であるカースに告げた。
カース:「哀れな人間よ。しかし、既に命の炎は消えているようだな。
     たとい我らが存命を願い、手を貸したとしても、その火をよみがえられることはできないだろう。
     本人が死を請うているのだからな。
     ウィドウ、長く苦しめてはいけない。早く楽にしてやるのは、今ここにいる我らの唯一できることぞ。」
ウィドウ:「ええ、存じております。でも・・・。」
ウィドウはためらった。
カース:「・・・。」
カースは長く苦しむ人間を見て、その痛みを絶つことを考え、細い首をそっと爪で掻き切ってやった。

 3年生のさくらには、土日にも補習がある。特に、定期考査の迫った5月下旬は忙しい。日曜の補習が終わり、探偵社に向かおうと、勢いよく机から立ち上がった。すると、隣の席の小金井顕の鞄にぶつかり、彼のかばんの中身が床にこぼれた。

 ゴン。

 落ちたのは、厚い独日辞書、厚い外国語の本、「医療心理学」など書かれたノート。
男「あ、ごめん、大丈夫?」
さくら「あ、うん・・・じゃなくて、こっちがぶつかったのに。そっちこそ大丈夫?」
彼は小金井顕。高校2年の後半に転校してきた帰国子女。あの本はドイツの医学の本なんだ。確かに、あんな厚いハードカバーの本が足にでも落ちてきたなら、怪我しそうだ。
顕はちょっとほほえんで、「こっちは大丈夫だよ」と言い、落ちているものを拾いはじめた。

 しかし。
 さくらは彼の「しるし」を見てしまった。首筋についた、「死」のマーク。
あれは、魔剣特有の印だ。
私たち(といっても、さくらは魔物ではないが・・・)以外にも、まだこの学校に魔物がいたとは・・・。
彼は、仲間?それとも・・・?
さくらは、なぜか動悸が止まらなかった。

◆ ◆ ◆

 さくらが八代事務所に到着し、来客の支度をするとすぐに、志狼、そして志狼が連れてきた依頼人の綾が来た。
綾:「依頼はね、私のフィアンセを身辺調査して欲しいの。」

 綾の相手は、高校3年生の小金井顕(あきら)。 前年まで父の仕事の関係で、ドイツで暮らしていた帰国子女。父と同じく、ドイツでは医学、とりわけ組織学関係を学んでいるらしかった。
八代にそれがわかったのは、「組織学」がオートマタの作成にも通じるものであったからだ。オートマタが機械のパーツでできる人間だとしたら、人間は「生理パーツでできている人間」だからだ。

 身辺調査のような仕事は、八代にとってはそれほど困難ではなかったが、若い女性がこのような依頼をしてくることに疑問を持っていた。
八代:「なぜ・・・あなたは依頼を?」
綾:「両親が、結婚する前には相手の身辺がキレイかどうかを『年のため』調べなさいっていったからだよ。」
16歳の若い娘は、こともなげに言った。
八代:「(身辺調査を軽々しく軽々しく考えているのだな・・・)調査を受けるのは構いませんが、このテの調査はどのくらいの金額かご存じですか?」
綾:「ああ、お金はあるから大丈夫。このくらいで足りるんでしょ?」
そういうと札の入った銀行の封筒をテーブルにポンと置く。八代が手に取り札を数えてみると30枚あった。
・・・全く妥当な数字であった。

さくら:「そんなお金・・・どうしたんですか?」
とても、高校生がポケットマネーでもっている数字ではない。
綾:「ああ、お姉ちゃんがくれたの。必要だろうって。」

「そんなお金、どうして簡単にもらっちゃったり、払ったりできるの?」<「エゴ:綾への嫌悪感?
 さくらは、そう綾に聞きたかった。しかし、この言葉を発すべきかどうか、さくらは少々悩んだ。
自分だけが、お金に厳しすぎるのだろうか。母がお金で苦しんでいるのを見たから。
だが、八代が難しい顔をしているのを見て、この思いを抱いているのは、自分だけではないことを知った。
・・・そして、相手に何も言わなかったのも。

 八代は、身辺調査に必要な情報を聞き、価値観の違う娘に金については説かず、「それでは数日間調査いたます。」として、彼女を送り出した。
そのとき、八代は、自分の既視感と現実との狭間にいた。
あの夢にでてきた「花瓶の中のバラバラ死体の少女」の顔が、綾と同じ顔だったからだ。
あの娘が、殺されるのだろうか。

奇しくも翌日からは、「研修学校」だという。それも、夢で見た、あの廃校で・・・。

さくら:「八代先生、あの人の依頼、受けていいんですか?」
八代は、非人道的な依頼や、理の通らない依頼は、平気ではねのける頑固一徹職人だとさくらは見ていた。<「エゴ:男は方ゆで卵(笑)」
八代:「ああ・・・今回は受ける。やらなきゃ「後味の悪くなる」仕事のようなのでね・・・。」
さくら:「・・・?」
そういうと、八代は、いつもの暗い奥の部屋へと戻っていった。

◆ ◆ ◆

 春華は、ややショックを受けていた。恋がこんなに儚いとは・・・(笑)。
八代探偵事務所から戻ってきたとき、秋山になんと言うべきか、一瞬詰まった。
秋山:「・・・で、春華、どうだったんだ?
    あの男は・・・本当に、綾さんのお姉さんの恋人だったんだろうな。本人のって事は、ないんだろうな。」
春華:「ああ、あの(男の)人は、あきらさんっつーオレのセンパイだから大丈夫。
     だけど、綾って子・・・」
秋山:「綾さんが、どうした?」
春華:「いや、何でもない。もう少し調べてやるからさ、明日一緒につき合えよ。」
秋山:「春華〜、お前、ほんとにいいやつだなあ(笑)。」

 翌日。 3年生のA組で、春華のタンカが聞こえた。
春華:「ああん?俺たちは勉強したいんだよ。勉強したいやつが学校来て、何が悪いんだよ!(爆)」
先生に向かって、あっているような、あっていないような暴言を吐いていた(笑)。

秋山:「・・・それで、俺たちは、何をすればいいんだ?」
春華とは対象的におびえまくっていた秋山は聞いた。
春華:「・・・隣のクラスの、小金井って奴を見張る。」
秋山:「そいつが・・・綾さんとなんか関係があるのか?」
春華:「まあ、な。隣のクラスの女子(さくらのことである(笑))にも、探りを入れてもらってある」
秋山:「・・・お前、本当に頼りになるなあ」
春華:「まあな(笑)」
それだけ言うと、古典の朗読なんかで眠くならないよう、MDのリモコン?に手を伸ばした。

 春華と秋山が下校時間になり、隣のクラスに移動しようとしたところ、すぐに小金井がでてきた。
さくらは目で合図をくれたので、2人は秋山のバイクに移動した。
小金井も近くの公園へ急ぎ、バイクで移動を始めたので、春華たちはそのバイクを尾行し始めた。
秋山:「ふん、ファイヤストームか。CBR600F4iとかじゃないところが坊ちゃんでやだよ、マジで。 第一、今時オンローダーなんてはやんねーんだよ。やっぱホンダならバルキリーじゃないとな。っていうか、やっぱ和モノならヤマハのドラッグスター、クラシックだよ、やっぱりバイク乗りはよお・・・」
などと、理解できない言語でけなしながら(笑)、並木通りを走っていった。

 しばらくすると瞳の赤のセリカが春華たちの後ろにつく。春華が振り返ると、横にさくらも乗っているようだ。
そのあと、小金井は左にウインカーをあげる。見たところ、郊外に出ていくようだ。

 赤信号で、秋山は春華に確認する。
秋山:「なあ、春華。」
春華:「ん、何だ。」
秋山:「この道、左に曲がると・・・研修学校への山の中なんだが。」 

◆ ◆ ◆

 午後7時。 案の定、小金井は、研修学校に着いた。
彼はバイクを降りると、まっすぐに学校の方へ向かっていった。
と、そのとたん、どこからか、大量のコウモリが飛んできて、彼を襲った。 しかも、それぞれのコウモリが、確実に彼ののど元をねらっている。

秋山:「あ、何だ、あれ・・・」
春華:「(秋山、ゴメン)」

 春華は、思い切りハングオンし、バイクを転倒させる。
荒い舗装の道路にバイクがこすれ、火花を出しながら、バイクと秋山は吹っ飛んでいった。
そのとき、コウモリをなぎ払うために、小金井は「魔銃」へと変身していた。
途中で飛び降りた春華も、ためらうことなく竜へと変身した。

 研修学校の明かり。
それを背景に、1匹の黒竜が堂々と光をにらみつける。
春華らの後ろからついてきていた瞳とさくらが見た光景は、それであった。

  銃剣つき自動小銃の姿をあらわした小金井は、一振りでコウモリをなぎ払う。
何があっても相容れない相手だと思っていた魔剣と、こうしてまっすぐ目を見てはなすこととなろうとは。

◆ ◆ ◆

 そのころ、志狼は綾の見張りをかねて、生徒たちの世話をしていた。
桜ヶ丘では屈指のホストが、水色のチェックのエプロンなんぞを着せられ、生徒たちと食事をさせられているのは苦痛かと思いきや、以外にもチェックすら着こなせる自分に満足しているようで、苦でもないようだ(笑)。

 食事もあらかた終わった頃、綾は席を立った。
もちろん、志狼も見張ろうと立ち上がる。
綾:「・・・トイレまでついてくる気?」
志狼:「・・・馬鹿言うな。途中まで一緒だろ。」
綾;「なんだ、あんたもトイレか〜。ツレだツレ〜(笑)」

と言い、女子トイレに向かった綾だったが、入ったとたんに異様な音がして、
大きな影が志狼の前を横切った。

志狼:「・・・!?ぬかったか。」

大きな影が、すぐ近くの「放送室」に入る。志狼もすぐ後を追った。
が、扉に手をかけたときに、

女の声:「キャアーーーーーーー!!!」

放送で、女性との絶叫が流れる。
志狼は、放送と、放送室からの生の断末魔の両方をきいた。
・・・綾ではない。
少々の安堵とともに志狼は扉を開け放った。

そのころ、同じく放送が聞こえた外では、さくらが天啓でも受けたかのように、周囲の仲間たちに言った。
さくら:「謎は、解けました。みなさん、今の放送室に向かってください。」
瞳:「謎が解けた!?」
さくら:「ええ。今なら綾さんは間に合います。急ぎましょう。」

◆ ◆ ◆

 瞳たちがその場所に着いたときには、人の姿の志狼が、造られた怪物の脇をかいくぐり、綾をかばうところだった。
「造られた怪物」は、怪力で志狼を殴りつける。
志狼:「ぐああっっ!」
さくら:「志狼さん!」
八代:「松田くん、君は・・・」

 「造られた怪物」なのか。
多分そうであることを察知していた八代は、あえて、「怪物」と口には出さず、名前で呼んだ。
その「彼」の腕は、指は、腹は、腿は、すでに崩壊していた。
肉ではなく、内蔵でもない、脈打つ内部の生体機関が露出していた。
そして、見るに耐えないその姿の向こうに、傷つきながらも綾をかばう志狼の姿があった・・・。
さくら:「志狼さん!!」
志狼:「・・・ぐっ・・・俺は大丈夫だ。
    それより、後ろの・・・」
理菜:「私に、気をつけろと言うことかしら?」
さくららの後ろに現れたのは、先日探偵事務所にやってきた理菜だった。
ただし、そのせなからは大きな黒い翼が生え、妖艶な雰囲気をまいてはいるが。
瞳:「・・・夢蝕み・・・」


 ただひたすら力をふるう造られた怪物・No.8に、八代が話しかける。
八代:「やめろ、やめんだ!」
No.8:「死ヌノ、怖イ・・・一人ニナルノ、怖イ・・・」
八代:「お前は、一人じゃない、オレも仲間だ!!」
No.8:「オマエ、仲間・・・」

オートマタと、造られた怪物。
どちらも、神に代わりて人の子が造りしもの・・・。

No.8:「デモ、オマエ、仲間ガイル。オマエ、名前持ッテイル。名前、呼ンデモラエル」
八代:「なら、お前にも名前を付けてやる。俺がお前の名を呼んでやる。
    お前は、ピスキーだ。」
No.8:「ピスキー・・・」
八代:「そうだ、お前は今日からピスキーだ。」
No.8:「オレ、ぴ、ぴすきー。」
八代:「おいで、ピスキー。お前は何も恐れなくていい。無駄な争いは、必要ないんだ・・・。」

 ピスキーとは、「生まれることのできなかった」子供。
No.8は、多分、人間として生まれたかったのであろう。その心を八代が汲んだ名前だった。

 ピスキーはそのとき、生まれて初めて、自分の意志で暴力をふるうのをやめた。

しかし、八代の背後から、甲高い声が飛んだ。
理菜が笑いながら八代を指さし、叫んだ。
理菜:「No.8、あんたに仲間なんかいるわけないでしょう! 寝ぼけちゃだめよ!
   こいつ(八代)にはゴスペルエンジンが載っているわ。こいつの魂を手に入れれば、『人間』になれるのよ!!」

八代と見つめ合っていたピスキーは、再び動き出した。
先ほどより強い、「欲」に駆られて。

ピスキー:「オレ、オマエ、欲シイ。欲シイ、欲シイ、欲シイ。
    オマエノたましい欲シイ・・・」
肉を飛び散らせ、近づいてくるNo.8。
しかし、八代は先ほどとは対照的に、冷たい、哀れんだ目になった。
八代:「それだけは、やれない・・・」

それだけ言うと、八代はオートマタに変身し、その腕でピスキーを斬りつけた。

◆ ◆ ◆


 食事が終わり、物騒な事件を一目見たいと大騒ぎしている生徒たちで、研修学校は騒然としていた。
その中で、静かな2人がいた。
春華:「先生・・・」
八代が物言わぬ骸となったピスキーを担いで、研修学校から去ろうとしている。
その2人の間には、深い絆があるように思えた。
どちらも、「人に造られたもの」としての、深い「絆」が。
その信頼関係を春華はなぜだかうらやましく思った。 

◆参考文献◆
HONDA CBR600F4i 599 cc・\820,000
HONDA FireStorm 995 cc・\920,000
HONDA VALKYRIE 1,520 cc・\1,640,000
YAMAHA DRAG STAR CLASSIC 1100 1,063 cc・870,000  

所見
 私、文章下手ね〜。流れがつかめない(笑)。
 主婦業の時間を大幅に食ったシナリオ作り。やはり、慣れていないシステムでマスターをするのは、とっても難しい。
今回の一番の失敗は、No.8ことピスキーを「半魔」じゃなくて「魔物」で作っておけばよかったなと思ったこと。その方が、半魔よりももっと他に生き方がなく、もっとかわいそうな身の上になったかもしれないなあと思ってたり。

 ちなみに、今回、No.8に「ピスキー」という名前をもらったとき、不覚にも感動しちまいいやがりました(笑)。そのおかげで、理菜を最初に考えていたより、もっともっと憎い役にしてみました。
ちょっと「ルールで無理矢理ロールプレイ!」というのにギモンを持っていたのですが、こんなロールプレイができるゲームというなら、このゲームも悪くないなあと思いました。
八代くん、ありがとう。ピーストバインドの楽しみを教えてくれたのは、あなたです。


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